地域連携ツールについて
地域包括ケアシステムの構築が進む中で、薬物療法については、病院薬剤師と薬局薬剤師のシームレスな連携が不可欠であることは言うまでもありません。また、改正薬機法においても、薬局には、患者の薬剤等の使用に関する情報を他の医療提供施設と共有する体制整備が求められています。
そこで、当会では、県内における「薬薬連携の必要性と推進」を検討すべく、岩手県病院薬剤師会との合同ワーキンググループ(以下、「WG」。)を設置し、連携ツールとしての各種様式を作成しました。
1.服薬情報等提供書(トレーシングレポート)
【使用上の注意】
・FAXによる情報提供は疑義照会ではありません。
緊急性のある問合せや疑義照会については、通常通り電話等による連絡が必要です。
・記載された内容は患者の個人情報となりますので、FAXやメールを活用する際は、くれぐれも、誤送信することのないように留意してください。
【服薬情報等提供書(トレーシングレポート)とは】
(参考:日経ドラッグインフォメーション 2017年4月号)
・薬剤師が得た情報を処方医に伝える文書。
「緊急性は低いものの、処方医に伝える必要がある」と薬剤師が判断した場合に用いる。
(内容例)服薬アドヒアランスや残薬状況。
薬剤の開始・変更後に現れた(軽度の)体調変化。
長期的に見て患者の服薬時の負担を軽減するための一包化や剤形の提案。
薬とは直接関係のない、患者のちょっとした訴えや生活習慣の変化などの情報、等。
・薬剤師としての考えを根拠とともにきちんと伝えることも大切です。
「医師に何をしてもらいたいか」具体的に記載しておくことで、トレーシングレポートによる提案を、医師に実行してもらいやすくなります。
提出までに時間的ゆとりがあるので、添付文書やインタビューフォーム、ガイドラインや書籍を調べたり、メーカーから文献を取り寄せたりして、添付してみましょう。
・トレーシングレポートを作成する際は、「簡潔かつ具体的に」を心がけましょう。
(1) いつ、誰から得た情報か
(2) 具体的にどのような状況か
(3) 薬局でどのように対応したか
(4) 情報提供した理由と薬剤師からの提案
・提出する前には、「他人が読んで理解できる内容か」を確認しましょう。
(1) 提出前に必ず、「誤字や脱字がないか」、「伝えたいことがわかるか」を確認しましょう。
(2) 同僚にも確認してもらいましょう。(薬局内で、事例を共有することにもつながります)
(3) 手書きの場合は、丁寧な文字で書きましょう。(読みやすさは何より重要です)
2.服薬情報提供書(薬薬連携シート)【入院時:薬局 ⇒ 医療機関】
入院予定の患者に関する服用薬の情報等について、薬局から医療機関に提供する際に活用してください。
【留意事項】
・入院する医療機関からの依頼に基づくものであり、また、当該患者の同意を得る必要があります。
3.薬剤管理サマリー【退院時:医療機関 ⇒ 薬局】
退院予定の患者に関する服用薬の情報等について、医療機関から薬局に提供する際に活用してください。
【留意事項】
・情報提供にあたっては、当該患者の同意を得る必要があります。
・「特記事項」には、入院中の状態(検査値を含む)変化や退院後の薬物療法支援にあたって、伝達したい内容を記載して下さい。
・「別紙1(入院時持参薬情報)」及び「別紙2(退院時処方に関する情報)」の作成に当たっては、お薬手帳ラベルや薬剤情報提供書を利用いただいて構いません。
・「別紙2(退院時処方に関する情報)」の作成にあたっては、退院時処方の内容の他、退院後の薬物療法支援にあたって、特に留意いただきたい内容を記載して下さい。
・「薬剤管理サマリー」を受け取った薬局は、「返書」を用いて、医療機関にフィードバックしていただきますようお願い申し上げます。
4.「合意書における疑義照会報告書」及び「プロトコール」
2010年4月30日付、厚生労働省医政局長通知(医政発0430第1号)として、医療の質の向上および安全性の観点から、薬剤師が主体的に薬物療法に参加するチーム医療の推進が発出された。この中で、薬剤師が積極的に加わるチーム医療を推進するために、薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査オーダについて、医師等との間で事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて医師等と協働して実施することが求められています。このような背景から、全国各地で取組みが進められています。
そこで、WGでは、医療機関及び薬局毎の報告形式の違いによる煩雑さや、新規導入予定の医療機関を鑑み、患者に安心で継続した薬物療法を提供するため、地域における病院薬剤師と薬局薬剤師の連携を通して、医薬品安全管理上、継続的な情報共有を行うことを目的として、参考様式を作成しました。
【運用に当たっての留意事項】
・個々の医療機関と薬局が、「事前に」合意書を取り交わす必要があります(「合意書における疑義照会」を実施していない医療機関については、運用できません)。
・変更の際は、必ず、患者に、服用方法、一部負担金等を説明し、同意を得てから行ってください。
次回処方に反映させるため、報告書を漏れなく提出してください。
・非採用薬品の変更は、次回処方に反映されないので、ご了承ください。
・医療用麻薬及び抗がん剤は、除外されます。
・不明な点がある場合は、従来どおり、処方医に疑義照会を行ってください。
・既に「合意書における疑義照会」を実施している医療機関においては、項目が異なる場合があるため、合意書の「覚書」による読み替えの再締結が必要。
【参考様式等】
- (1) 合意書における疑義照会プロトコールについて
- PDF ワード
- (2) 院外処方箋における疑義照会プロトコールに関する合意書
- PDF ワード
- (3) 覚書 院外処方箋における疑義照会プロトコールに関する合意書
- PDF ワード
(4) 合意書における疑義照会報告書
(A : PDF ワード)
(B : PDF ワード)
※ 上記A・Bの違いは、「備考欄の有無」です。